壺中天日乗

メモ帳

言葉・意味・世界

結婚式に参列した。そこで飛び交う愛という言葉は、いつも私を混乱させる。 愛とは何か。それは言葉だけがあって、内容はない。内容は人々の想像に任せられる。その事実はしばしば人を混乱に落とし込むかもしれないが、それは問題ではない。人々に世界との関…

吉行淳之介『暗室』(講談社文庫)

11月28日(金)晴れのち曇り 『地下室の手記』を読み始める。最初は面白いが途中からなんかノれなくなり、中断。『暗室』を読み始める。面白い。まず書き出しがよい。こんなさりげない書き出し初めて見た。エッセイで培った散文力(こんな言葉ないけど思わず…

高橋源一郎『13日間で「名文」を書けるようになる方法』(朝日新聞出版)

古書店にて『13日間で「名文」を書けるようになる方法』を買った。500円だったので迷いまくったのだが最終的には買った。この本は雑誌連載時に初めて読んで単行本になってからも図書館で読んだ。 面白いが名作ではないと思う。結構好きな本だが。 この本だ…

リアルゴールドの謎

最近思うところがあって(ってただの個人的興味だけど)よく自動販売機を観察しているのだが、ひとつ気になったことがある。 それは「リアルゴールドの存在」である。 自動販売機を注視するまでまったく気づいていなかったのだが、驚異の存在率である。三台…

ベンヤミン『複製技術時代の芸術』

以前読んだことがあったのだが、その時はなんかよくわからないなって感じだった。最近再読する機会があり、読んでみると色々思うところがあった。 とりあえず要約を作ったので以下に載せる。ちなみに読んだのはベンヤミン『ボードレール』(岩波文庫)に収録…

竹熊健太郎『私とハルマゲドン』(ちくま文庫)

石川文康『カント入門』を読んでいるのだが進まない。1回読んで分からなくて3回読んだら分かったような気になって、さらにもう1回読んだらまた分からなくなる…という過程を経ていま79ページ。めんどくさい…こんな亀より遅いペース(亀って実際見ると結構速い…

芸術作品の贋作騒動について

芸術作品の贋作騒動を見るたびに芸術とは何かと考える。芸術作品の値段が作者や鑑定書で決まるのなら、芸術作品の値段は作品それ自体ではなく、かなりの割合が権威由来であると考えざるを得ない。 はっきりいってこれは胡散臭すぎるし、アホラシイとすら思う…

大西巨人『神聖喜劇』(光文社文庫)

ついに読了した。何度も挑戦しそのたびに挫折したのだが、今回は読むことが出来た。おそらく読書的経験値が上がっていたことと、漫画版を読んでいたことが原因だと思う。漫画版を読んでいなかったら、読了できなかったと思う。この場を借りて、漫画版を作っ…

坪内祐三『一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」』(文春文庫)

坪内祐三は自称保守だが、「本当に保守なのか?」という疑問が以前からあった。特に週刊スパで現在も連載している「文壇アウトローズの世相放談・これでいいのだ!」という福田和也との対談で「でも結局、皇室がなくなっても日本は変わんないと思うんだよ。う…

打ち切り漫画について

我々が打ち切り漫画に惹かれるのは、それが人生に似ているからではないか。 我々は人生の終点を知らない。しかし複雑に入り組んだ人生の物語がまさに入り組んだままゆっくり消えていくという「あの感じ」はそこそこ生きていると人間誰しも経験しているものだ…

最近のアイドル事情について考えた

昔はアイドルってそんなにいなかったけど、最近は猫も杓子もアイドルって感じで、とりあえずアイドルってつけとけって感じのコンテンツ化が著しい昨今ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。私はたまにラジオとか店(主にドラッグストア)の有線でアイドルっ…

もっと美味しそうに食べたら?

「もっと美味しそうに食べたら?」とよく言われる。 本当に美味しい場合にも言われる。 つまり伝わってないらしい。 それ以来、本当に美味しいのに、美味しそうに食べる演技を強いられている。これがホントにイヤ。せっかく美味しいのに「ああ演技しなきゃ」…

チャールズ・ブコウスキー、検閲について語る

チャールズ・ブコウスキーが彼の本を禁書にした図書館に出した手紙 http://d.hatena.ne.jp/yomoyomo/20111027/bukowski Letters of Note: Charles Bukowski on Censorship(手紙の原文あり) http://www.lettersofnote.com/2011/10/charles-bukowski-on-cens…

怪談が語るトラウマ

最近寝つきが悪くてどうにも調子が狂う。おそらく熱帯夜だからだろう。連日変な夢が多いような気がしている。しかし憶えていないので、本当のところは分からない。ただ、朝起きると「ああ変な夢だったなあ」と思い、そのときは夢の内容も覚えているのだが、…

養老孟司『唯脳論』(ちくま学芸文庫)(仮)

養老孟司『唯脳論』読了。色々目からうろこの落ちる本だった。時間があればまたブログに書きたい。とりあえず面白かったところをツイートしてみる。☆☆☆と思ったが書いているうちに長くなったのでやっぱりこちらに書くことにします。この本に関してはまたあら…

『罪と罰』に関する疑問点

『罪と罰』を読んでずっと引っかかってることがあるんだけど、なんでソーニャがラスコーリニコフをあんなに好きなのかわからない。ラスコーリニコフって中二病入ってるし言動イミフだし殺人犯だし刑期八年だし魅力無い。ソーニャみたいな聖女はいないと思う…

古書と私の未来の思い出

電子書籍はこれから隆盛すると思う。それに伴い、紙の本は減少し、古書はますますマイナーなモノになっていくと思う。そう考えたときに、私は古書を買うなかで経験した様々な出来事――たとえば買った本に署名がしてあったり、サイン本だったり、自作の変な栞…

能町みね子『くすぶれ!モテない系』(文春文庫)

うちら「モテない系」だよね~なんでこんなんなっちゃったんだろうね~でもまあべつにいいんじゃね?まあこれからもこんなかんじいこうぜ~じゃあばいばい、というかんじの女子会エッセイです。おもしろいな~とおもったのは「モテない系というのは文化系女…

「お前が言うな」について

「お前が言うな」的状況は、よく考えれば、発言内容が妥当であれば、相手が誰であろうと、冷静に自己検討すればいいだけの話であり、またその方が自分のためになるのだが、実際にはなかなかそう出来ないわけで、その理由は、解剖学的に見て、脳は「感情の部…

拷問者の精神生活

ハロルド・ピンター「何も起こりはしなかった ―劇の言葉、政治の言葉」 (集英社新書)に載っていた、以下の文章について考えてみる。 拷問者が音楽好きで自分の子供たちには非常にやさしい人間だという事実は、二十世紀の歴史を通じて明白に証明されてきまし…

政治の言葉づかい あるいはネット上での議論について

ハロルド・ピンター「何も起こりはしなかった ―劇の言葉、政治の言葉」を読んで以来、政治の言葉について考えている。 そして、以前読んだ本の以下の箇所を思い出した。 養老孟司 さっきも言ったように、良し悪しの判断は、脳の中でも言語とは違う部分に入っ…

ハロルド・ピンター「何も起こりはしなかった ―劇の言葉、政治の言葉」 (集英社新書)

日本での知名度はいまひとつですが、イギリスを代表する劇作家であり、ノーベル文学賞受賞者であるハロルド・ピンターの発言集です。 この本は次の三章からなっています。 Ⅰノーベル文学賞受賞記念講演 Ⅱ世界情勢を見つめる Ⅲ創作活動について 冒頭に収録さ…

思考とエディプスコンプレックス

頭の中では考えは明確になっているのにいざ文章にすると不明瞭になるという不思議をよく経験する。 おそらく文章は頭の中にあるときは生理感覚と結びついていて意味充足状態にあるのだろう。 文章にするときに言語へのコード化が起こりその過程でまた、軋轢…

松岡正剛「知の編集術」 (講談社現代新書) 追記

モノマネってさ、する前に「いまから誰某のモノマネやりま~っす」って宣言してからやらないと、誰の真似かまったく判らないって知ってた? 一回TVで原口あきまさが宣言せずにやってて、みんなポカーンてなってたのが記憶に残ってる。ほんとに判らないんだよ…

松岡正剛「知の編集術」 (講談社現代新書)

われわれの意見が多様なのは、別にもらった理性の分け前が人によって多いから起こるのではなくて、単にみんなの関心の対象がちがっていて、ものの考えかたもまちまちだからなのだ。つまり活発な精神を持つだけでは不十分であって、いちばんだいじな要件とい…

モノマネ芸人に託された使命

俺は以前このようなツイートをしたことがある。 前田敦子のモノマネする人が人気みたいだね。テレビでみたけど、なかなか悪意あるね。あの人がこんなにすぐに人気が出たというのは、前田敦子に対する世間の目がいかに意地悪であるかという事をよく示している…

未成年の主張、あるいは大学教育について

こんなニュースがある。 桜宮高生徒、涙声で不満訴え「私たちの声聞いてくれなかった」 「本当に残念。言葉が出ない」。大阪市立桜宮高の体育系学科の募集中止を受け、同校の運動部の元主将ら、3年生8人が21日に市役所で記者会見した。「私たちの声を十…

掌編の時代

古本屋でいつもどおりあれこれ物色していたら、「日本プロレタリア文学集」の端本数冊が目に入った。箱の裏に収録作品が載っていたので確認していると、ふと目に留まるものがあった。「日本プロレタリア文学集・第20巻 『戦旗』『ナップ』作家集 ⑦」の収録作…

なぜ香具師は神農を信仰するのか?

「香具師の生活」という本を開いたら、表紙をめくるとすぐに神農の写真が載っていた。なんでも、香具師の信仰の対象となっているらしい。そして、本書には香具師の歴史が述べられているのだが、なんと古代中国にその起源があるという。 神農(しんのう)は古…

深沢七郎「楢山節考」(新潮文庫)

結構ショックを受けた。 たしかにこれはリアルである。俺の知っているおばあさん(同居していた曾ばあさん、家の近くにあった駄菓子屋のばあさん)は確かにおりんばあさんにそっくりだった。おりんばあさんのような人物はたしかに存在する。俺は類型を何度も…