壺中天日乗

メモ帳

読書

吉行淳之介『暗室』(講談社文庫)

11月28日(金)晴れのち曇り 『地下室の手記』を読み始める。最初は面白いが途中からなんかノれなくなり、中断。『暗室』を読み始める。面白い。まず書き出しがよい。こんなさりげない書き出し初めて見た。エッセイで培った散文力(こんな言葉ないけど思わず…

ベンヤミン『複製技術時代の芸術』

以前読んだことがあったのだが、その時はなんかよくわからないなって感じだった。最近再読する機会があり、読んでみると色々思うところがあった。 とりあえず要約を作ったので以下に載せる。ちなみに読んだのはベンヤミン『ボードレール』(岩波文庫)に収録…

大西巨人『神聖喜劇』(光文社文庫)

ついに読了した。何度も挑戦しそのたびに挫折したのだが、今回は読むことが出来た。おそらく読書的経験値が上がっていたことと、漫画版を読んでいたことが原因だと思う。漫画版を読んでいなかったら、読了できなかったと思う。この場を借りて、漫画版を作っ…

坪内祐三『一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」』(文春文庫)

坪内祐三は自称保守だが、「本当に保守なのか?」という疑問が以前からあった。特に週刊スパで現在も連載している「文壇アウトローズの世相放談・これでいいのだ!」という福田和也との対談で「でも結局、皇室がなくなっても日本は変わんないと思うんだよ。う…

打ち切り漫画について

我々が打ち切り漫画に惹かれるのは、それが人生に似ているからではないか。 我々は人生の終点を知らない。しかし複雑に入り組んだ人生の物語がまさに入り組んだままゆっくり消えていくという「あの感じ」はそこそこ生きていると人間誰しも経験しているものだ…

チャールズ・ブコウスキー、検閲について語る

チャールズ・ブコウスキーが彼の本を禁書にした図書館に出した手紙 http://d.hatena.ne.jp/yomoyomo/20111027/bukowski Letters of Note: Charles Bukowski on Censorship(手紙の原文あり) http://www.lettersofnote.com/2011/10/charles-bukowski-on-cens…

養老孟司『唯脳論』(ちくま学芸文庫)(仮)

養老孟司『唯脳論』読了。色々目からうろこの落ちる本だった。時間があればまたブログに書きたい。とりあえず面白かったところをツイートしてみる。☆☆☆と思ったが書いているうちに長くなったのでやっぱりこちらに書くことにします。この本に関してはまたあら…

『罪と罰』に関する疑問点

『罪と罰』を読んでずっと引っかかってることがあるんだけど、なんでソーニャがラスコーリニコフをあんなに好きなのかわからない。ラスコーリニコフって中二病入ってるし言動イミフだし殺人犯だし刑期八年だし魅力無い。ソーニャみたいな聖女はいないと思う…

能町みね子『くすぶれ!モテない系』(文春文庫)

うちら「モテない系」だよね~なんでこんなんなっちゃったんだろうね~でもまあべつにいいんじゃね?まあこれからもこんなかんじいこうぜ~じゃあばいばい、というかんじの女子会エッセイです。おもしろいな~とおもったのは「モテない系というのは文化系女…

拷問者の精神生活

ハロルド・ピンター「何も起こりはしなかった ―劇の言葉、政治の言葉」 (集英社新書)に載っていた、以下の文章について考えてみる。 拷問者が音楽好きで自分の子供たちには非常にやさしい人間だという事実は、二十世紀の歴史を通じて明白に証明されてきまし…

政治の言葉づかい あるいはネット上での議論について

ハロルド・ピンター「何も起こりはしなかった ―劇の言葉、政治の言葉」を読んで以来、政治の言葉について考えている。 そして、以前読んだ本の以下の箇所を思い出した。 養老孟司 さっきも言ったように、良し悪しの判断は、脳の中でも言語とは違う部分に入っ…

ハロルド・ピンター「何も起こりはしなかった ―劇の言葉、政治の言葉」 (集英社新書)

日本での知名度はいまひとつですが、イギリスを代表する劇作家であり、ノーベル文学賞受賞者であるハロルド・ピンターの発言集です。 この本は次の三章からなっています。 Ⅰノーベル文学賞受賞記念講演 Ⅱ世界情勢を見つめる Ⅲ創作活動について 冒頭に収録さ…

松岡正剛「知の編集術」 (講談社現代新書) 追記

モノマネってさ、する前に「いまから誰某のモノマネやりま~っす」って宣言してからやらないと、誰の真似かまったく判らないって知ってた? 一回TVで原口あきまさが宣言せずにやってて、みんなポカーンてなってたのが記憶に残ってる。ほんとに判らないんだよ…

松岡正剛「知の編集術」 (講談社現代新書)

われわれの意見が多様なのは、別にもらった理性の分け前が人によって多いから起こるのではなくて、単にみんなの関心の対象がちがっていて、ものの考えかたもまちまちだからなのだ。つまり活発な精神を持つだけでは不十分であって、いちばんだいじな要件とい…

掌編の時代

古本屋でいつもどおりあれこれ物色していたら、「日本プロレタリア文学集」の端本数冊が目に入った。箱の裏に収録作品が載っていたので確認していると、ふと目に留まるものがあった。「日本プロレタリア文学集・第20巻 『戦旗』『ナップ』作家集 ⑦」の収録作…

なぜ香具師は神農を信仰するのか?

「香具師の生活」という本を開いたら、表紙をめくるとすぐに神農の写真が載っていた。なんでも、香具師の信仰の対象となっているらしい。そして、本書には香具師の歴史が述べられているのだが、なんと古代中国にその起源があるという。 神農(しんのう)は古…

深沢七郎「楢山節考」(新潮文庫)

結構ショックを受けた。 たしかにこれはリアルである。俺の知っているおばあさん(同居していた曾ばあさん、家の近くにあった駄菓子屋のばあさん)は確かにおりんばあさんにそっくりだった。おりんばあさんのような人物はたしかに存在する。俺は類型を何度も…

きらたかし「赤灯えれじい」の裏設定?

きらたかしの漫画「赤灯えれじい」(講談社)に関して、「これは裏設定なのか?」とふと思った点がある。 それは「主要登場人物は在日なのではないか?」ということである。 ヒロインのチーコ(秋山智子)は金髪・喧嘩上等・ヤンキーである。この特徴からし…

聞く力、もしくはダイアローグの愉悦について

阿川佐和子「聞く力」がベストセラーらしい。私は前から思っているのだが、「聞く力」と藤原正彦「国家の品格」って購買層がかぶっている気がしてしょうがない。両社に共通するのは、「保守的」、「啓蒙的」である点だと思う。正月とかに読むのにぴったりな…

今回の選挙で思い出した事

今回の選挙をTVで見ていて、「世界の名著」(中公新書)のトクヴィル「アメリカのデモクラシー」のパラグラフを思い出した。 「アメリカのデモクラシー」は文字通りアメリカのデモクラシーを分析した本である。 成熟した大衆社会は、「諸条件の平等化」が起…

桑原武夫編 「ルソー」(岩波新書)

内容は、ルソーの思想と人生を概説するというもの。 第一印象は・・・社会に対する憎悪が凄いわ。なんでここまで嫌うんだろうねえ。 受難続きの人生がそうさせたのか、そもそも生まれつきそうだったのか、おそらく両方なんかな。まあルソーの生きた時代が君主政…

中村雄二郎, 山口昌男「知の旅への誘い」(岩波新書)

図書館で「笑いと逸脱」を借りて以来、山口昌男には前から興味を持っていた。古書店で「知の旅への誘い」を購入して長らく積読していたのだが、坪内祐三「新書百冊」でこの本に言及しているのを見て、このたび気が向いたので読むことにした。 内容をひとこと…

卯月妙子「人間仮免中」(イースト・プレス) *読んだ感想ではありません

卯月妙子が新作を出したらしい。 卯月妙子の名前は以前から知っていた。 彼女の「実録企画モノ」をはじめて読んだときは衝撃だった。作品中に出てくる彼女の狂った日常に当時大学生だった僕はどう反応していいかわからなかった。 幸い、ギャグ漫画としての文…

坪内祐三「新書百冊」(新潮新書)

自伝であり、出版文化史であり、ブックガイドでもあるという内容。つまりいつもの坪内節。「当時赤線を引いた部分」としていろんな新書から引用がなされているのだが、そのセンテンスがいかにも、というか、さすが坪内祐三、という目の付けどころ。氏の頭の…

ドストエフスキー「罪と罰」(新潮文庫)

読む前はものすごい衝撃をうけるんじゃなかろうかと期待していたせいか、意外と普通な印象。でも心理描写と人物造詣は凄かった。みんな濃すぎ。これが噂のポリフォニーかと感心。にしても始終人が主人公の前に現れるのが演劇みたいだった。登場人物がみんな…

チェスタトン「木曜の男」 (創元推理文庫)

副題に「ある悪夢」とあるが、たしかに悪い夢のような物語だった。終わりのほうの展開は唖然として見守ることしか出来なかった。ツッコミどころは数えあげればきりが無いが、この作品はリアリズムとは別の論理に貫かれていると思えば納得できる。背景はやは…

野坂昭如「エロ事師たち」(新潮文庫)

文体面白い。小説というより語りだな。関西弁がつぼ。「わかってま」俺も使ってみたい。ストーリーも相当面白かった。シロクロ親子、恵子が印象に残ってるなあ・・・男性が意外と繊細で、女性が実はガサツ、という風に書かれているが、これは女性はどう読むのだ…

村上龍「空港にて」(文春文庫)

短編集。著者自身は「空港にて」が一番気に入っているらしい。最初あんまり乗り気ではなかったのに、なんとなく読み始めてなんとなく読了してしまった。するっと読めるけど、文章は相当洗練されてるな。過去現在内面描写情景描写を自在に行き来しながらも混…

ひぐちアサ「ヤサシイワタシ」(講談社)

読むのに体力がいる漫画。弥恵って境界例だよね。それにしても恋人とはいえ、ここまで斬り合うような会話するかね。俺はついていけないなあ。弥恵は「私をわかって」オーラが凄くて地雷臭プンプン。俺なら「お前自分のことさえわかってないじゃん」って言う…