村上龍「空港にて」（文春文庫）

短編集。著者自身は「空港にて」が一番気に入っているらしい。

最初あんまり乗り気ではなかったのに、なんとなく読み始めてなんとなく読了してしまった。

するっと読めるけど、文章は相当洗練されてるな。過去現在内面描写情景描写を自在に行き来しながらも混乱しないのはかなりの書き手である証拠。

ラストの「空港にて」で、風俗嬢の主人公が彼氏(っぽい男)にそんなに義足が好きなら義足作る仕事したらいいやんっていわれて無理だよっていったらどうして無理なんだよ？っていわれて、

「どうして無理なのか、そんなことは考えたことがなかった」

って考えるくだりが凄い好き。

たしかに僕らってなんとなく諦めてしまってるところがあるよな。どうせ無理･･･みたいな諦念。でもそれって実は何の根拠もない･･･かもしれない･･･根拠はあるかもしれないけど、それはそう思い込んでるだけ！

「どうして無理なのか、そんなことは考えたことがなかった」

空港にて (文春文庫)