壺中天日乗

メモ帳

能町みね子『くすぶれ!モテない系』(文春文庫)

うちら「モテない系」だよね~なんでこんなんなっちゃったんだろうね~でもまあべつにいいんじゃね?まあこれからもこんなかんじいこうぜ~じゃあばいばい、というかんじの女子会エッセイです。

おもしろいな~とおもったのは「モテない系というのは文化系女子という呼称が偉そうで気にいらないから作った(意訳)」というところです。(p268)
男性ならオタク系といわれてもまあそうかもなあ実際おれらオタクだし、という感じで受け入れるとおもうんですが、あえて「モテない系」と名乗っているところに自意識の高さがうかがえます。オタク系ほどダサくなく、文化系女子ほど偉そうじゃない、ということでしょうか。男性は外部からつけられた呼称に安住し、女性はみずから名乗る。このへんの男女間の違いがおもしろいとおもいました。

てかBLってむかしは「やおい」という名前でオタクの典型だったのにいつのまにかBLになって文化系女子のカテゴリーになってるし。なんでBLが出世したかというと、僕のみたところ、ユリイカ文化系女子カタログ、BLスタディーズ)でとりあげられたからだとおもいます。ユリイカは文化系の牙城だ!ユリイカすげえ。

でも「モテない系」って実は曖昧でひろいんだとおもいました。「モテない系」というのは、要は「『モテ系』および『圏外』以外の人々」という定義となっています。一般地味層、負け犬も内包する概念のようです。(p248)

ただエッセイで書かれるモテない系は、どうやらもっと特定の人々ではないだろうかと。サブカル系、文化系女子とかなりかぶっている、というか一緒かもしれない。ただ違うのは自意識の違いでしょうか。サブカル系、文化系女子よりも若干謙遜している感じですね。でも謙遜できる私たちはステキとじつはおもっている。

「モテない系」がモテないのは「モテたい」という意識の純度がひくいからだとおもいます。というのは、「モテない系」のいう「モテたい」には、自己顕示欲と承認欲求が他の層と比較して高い割合でブレンドされているからです。

だから「モテたい」といっても、わざわざ自分の趣味嗜好を曲げてまでモテたいとはおもわない。しかし一方では、かなりあからさまにモテたいとおもっている。「モテない系」のいう、「モテたい」は、どちらかというと、「受け入れてほしい」のほうが近いとおもいます。だから、私のありのままを受け入れてくれる人が現れないかしら、となる。(p279)

基本的には自虐エッセイだけど自虐とみせかけて自賛、というなかなかいい湯加減のエッセイとなっております。

あと「モテない系」男子はじつはモテる人々なのでおまえらよかったな!といわれております。くるりとラーメンズ松本大洋を知っていればいいとのことです。岡田あーみんを知っていればもうおまえいうことねえよ!だそうです。岡田あーみんは読んだことがありませんが、ヴィレッジヴァンガードにいつも置いてあるので、それ系のアイテムなんだなあ~となんとなくおもっていたのですが、納得しました。

全体的にモテ系にたいする嫉妬が漂っているかんじですが、そこはまあ、くすぶっているということで。

くすぶれ!モテない系 (文春文庫)

くすぶれ!モテない系 (文春文庫)