高橋源一郎『13日間で「名文」を書けるようになる方法』(朝日新聞出版)
古書店にて『13日間で「名文」を書けるようになる方法』を買った。500円だったので迷いまくったのだが最終的には買った。この本は雑誌連載時に初めて読んで単行本になってからも図書館で読んだ。
面白いが名作ではないと思う。結構好きな本だが。
この本だけ読んでも名文は書けないと思う(絶対無理というわけではない)。この本は添削とかは全然しない。文章教室というよりは「文章とは何か」みたいなところを考える本なので、技術的なことはあんまり教えてくれないのである。
簡単にいうと、丸谷才一の文章読本を古典的名作とおけば、この本は『ポストモダン文章読本』って感じなのだ(こんなこと何処にも書いてないが)。だからこの本を読んだら次は丸谷才一の文章読本を読むべきだ(逆は別にやらなくてもよい)。この本だけだと危険。文章が壊れる危険がある。やっぱ高橋さんはポストモダニストだなって思うわ。
そもそもタイトルの日本語が微妙じゃない?丸谷さんだったら噛み付きそうなタイトルだと思う。テニヲハが上手くはまってない感じがする。「を」を「が」に替えたほうがまだいい(それでも本のタイトルとしては微妙だと思う)。いっそのこと『高橋源一郎の文章教室』でいいのでは。そのほうがわかりやすい。まあインパクトは落ちるが。
とはいえこの本を読むとなんか心がざわついて「今までの俺の文章は全部駄目だ…」みたいな懺悔的気分になるんだよな。そしてもう一度やり直そうみたいな気分になる。文章読本の一番の目的が「読者に文章を書きたくなるようにさせること」であるとすれば、この本は名著かもしれない。少なくとも俺にとっては。
とはいえこれ読んでから例えば吉行淳之介のエッセイとか読むと「吉行文章上手すぎだろ…吉行に肉薄するためにはやっぱ丸谷文章読本のアプローチで行くしかないわ…」って思うな。つまり憑き物が落ちる。丸谷文章読本がいう文章上達のコツは「名文をたくさん読むこと」。できれば文語文も。
てかこの本、名文て字が括弧でくくられてるのが引っかかる。つまりここでいう名文は世間一般にいわれている名文ではアリマセンヨっていっているっぽい。
とか思って丸谷才一の文章読本読み直したら両者あんまり違わないことに気付いた。丸谷文章読本でも添削とかしないし、文章とは何かという問題を取り扱っている。なのにどうしてこんなに印象が違うのかと考えてみたのだが、おそらく歴史認識の違いが原因ではないかと思った。歴史っていっても文章(名文)のね。やっぱ高橋さんの本はポストモダンって感じなんだよね。
- 作者: 高橋源一郎
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