壺中天日乗

メモ帳

なぜ香具師は神農を信仰するのか?

香具師の生活」という本を開いたら、表紙をめくるとすぐに神農の写真が載っていた。なんでも、香具師の信仰の対象となっているらしい。そして、本書には香具師の歴史が述べられているのだが、なんと古代中国にその起源があるという。

神農(しんのう)は古代中国の伝承に登場する皇帝。三皇五帝の三皇の一人。百草を嘗めて効能を確かめ、諸人に医療と農耕の術を教えたという。農業と薬において甚大な貢献をしたため、中国では“神農大帝”と尊称されていて、医薬と農業を司る神とされている。
*1

香具師って、あの縁日にイカ焼きとか売っているあんちゃんのことである。
あの人達が、古代中国を起源に持っているとは、なんかオーバーな気がする。信仰心があるような雰囲気も感じない。
それだけ信仰を内面化しているということだろうか?
どうもそんな感じもしない。
この違和感はなんだろう?と思っていたのだが、ひとつある考えに思い至った。それはこうである。
香具師が神農を信仰するのは、明治時代の欧米帰りの神学者が日ユ同祖論に惹かれたことと同じである。
以下にその理由をのべる。
内田樹は「私家版・ユダヤ文化論」において、欧米帰りの神学者が日ユ同祖論に傾倒していった理由として、次のようなことを述べている。
「欧米帰りの神学者たちは欧米があまりに日本より進んでいたことにショックを受けた。劣等感に駆られた彼らは欧米の宗教的世界において父のポジションにあたるユダヤ教およびユダヤ人に惹かれた。」*2
つまり劣等感が原因ということである。
香具師は、歴史的には土地を持たない流れ者であり、マイノリティである。つまり農村共同体において弱者であった。
香具師が神農を信仰するのは、農村共同体的な社会を迎え撃つための一種の装飾である。
これは欧米帰りの神学者が世界を迎え撃つためにユダヤ的なものを呼び出したことと同型である。
さらにいえば、ヤクザが神事を大事にすることも、同じ理由だと私は考えている。

加えて、新興宗教の教祖が自分は仏陀の生まれ変わりであるとか、キリストの生まれ変わりというのも、ハク付けのためであると考える。(北朝鮮が金王朝神の化身のごとく扱うことも同型であることは言うまでもないw)
私の親戚には、某新興キリスト教の信者がいるので、どうも新興宗教の問題は他人事とは思えない。

ここからは新興宗教の話になる。
本当に自分の教義に自信があるのなら、キリストとか仏陀の名前を出さずにプレゼンしてもらいたい。過去の偉人の威を借りている時点で胡散臭く感じてしまう。せめて、キリスト・仏陀より私の方が凄いとでもいってもらいたい。
まあこれはこれで、否定と言うかたちで過去の偉人にもたれかかっている格好になっているのだが、騙すならせめてこれくらい凝ったことをやってもらいたいw
某新興キリスト教の信者のおばさん、法事のお返しの品の中に「悪霊がうんたら」とか書いているビラ入れてくるから、困るんだよなぁ・・・

てきや(香具師)の生活 (生活史叢書 3)

てきや(香具師)の生活 (生活史叢書 3)


私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)

私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)

*1:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E8%BE%B2

*2:内田樹「私家版・ユダヤ文化論」 p70あたり