「人罪」という言葉の悲しさ
ビジネス書等で主に使われている「人材」という言葉について、僕は以前から「嫌な感じだな」と思っていた。人間をモノ扱いしていることに不快感を感じていたのだが、いつのまにか新たな言葉が生まれていたようだ。
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初出はよくわかりませんが、人材関連のビジネス書やコラムを見ていると必ずと言っていいほどこの「人材」「人罪」「人在」「人財」の分類が登場してきます。
人材・・・実績はないけど成長が期待できる人。普通の人。
人罪・・・実績もないし、成長も期待できない人。企業的にはお荷物。
人在・・・実績はあるけど、それ以上の成長が見込めない人。
人財・・・実績もあり、成長が期待できる人。企業的に欲しがられる人。
http://www.webusagi.com/?p=138
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この中でも特に、「人罪」という言葉には驚いた。この言葉を作った人の見識を疑う。この言葉には相手を説得し、良い方向に導こうとする意志が全く感じられない。また、この「人材」「人罪」「人在」「人財」の枠組みからは、社員を監視し、処罰するという意図しか感じない。
この言葉は以下の理由で使うべきではない。
①この言葉でやる気が出る社員はいない
この言葉および「人材」「人罪」「人在」「人財」の枠組みが使われる状況として、上司が部下に発破をかけるという場合が考えられる。しかしこの言葉を使ったからといって、部下がやる気を取り戻すか、といわれれば甚だ疑問である。
こんなニュースもある。
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“褒めて伸ばす”は本当だった
http://news.mynavi.jp/news/2012/11/09/086/index.html
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「人罪」という言葉を投げかけられたところで、やる気が出る社員はいない。生きる力が損なわれるだけである。
もう一つ考えられる状況として、ターゲットの社員を辞めさせるために、「人材」「人罪」「人在」「人財」の枠組みを使うという場合がある。この場合は、「お前はいらないから辞めろ」と言っているだけでなく、「罪人」扱いされているわけで、明確にパワハラに該当する。「罪」という言葉は、自己処罰を誘発する極めて危険な言葉である。刑法に触れたわけでもないのに「有罪」呼ばわりされることは、たとえ善意から出たものであっても、あってはならない。
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「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」
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また、会社というトップダウン式の権力が支配的な場で、このような言葉を使う事は、たとえ軽い気持ちから出たものであっても、冗談に聞こえないという事も指摘しておく必要がある。
②上司の人望が損なわれる
①の理由があるにもかかわらず、「人材」「人罪」「人在」「人財」の枠組みを使って部下に発破をかけようとする上司に、ついていこうと思う社員はいない。社員に嫌われ、疎まれるだけである。会社の雰囲気を悪くしたいのなら別だが、部下を育てるつもりがあるのならば、断じて使うべきではない。
最後に、就職活動中のみなさんへ。
就職アドバイザーがこの言葉を使って皆さんを脅すことがあるかもしれないが、そういう人々に耳を傾ける必要はない。彼らは社畜ブリーダーだから気にしなくてよい。このような言葉を使って社員をこき使う会社に、あなたが入る理由はどこにもないのだから。